山岳ガイド・登山家 杉本龍郎さん「アナログで山を歩き続けていたプロ山岳ガイドがネパールの未踏峰で実感した「可視化する」ことのインパクト」

山岳ガイド・登山家 杉本龍郎さん「アナログで山を歩き続けていたプロ山岳ガイドがネパールの未踏峰で実感した「可視化する」ことのインパクト」

登山ガイド・アスリートフードマイスター 岩田京子さん「「ゴツいし、使いこなせない」という先入観を覆す、私に寄り添う小さなパートナー」 読む 山岳ガイド・登山家 杉本龍郎さん「アナログで山を歩き続けていたプロ山岳ガイドがネパールの未踏峰で実感した「可視化する」ことのインパクト」 1 分

アナログで山を歩き続けていたプロ山岳ガイドがネパールの未踏峰で実感した「可視化する」ことのインパクト

Amazfit T-Rex Ultra 2 がもたらした、極限の冬山と日常の安全管理での劇的な進化とは

山岳ガイド・登山家 杉本龍郎さん

2026年、ネパールの未踏峰「ジャルキャヒマール(Jalkya Himal)・ギャラ(Gyala)」の初登頂という偉業を成し遂げた気鋭の登山家であり、日本山岳ガイド協会認定山岳ガイドの杉本龍郎さん。大自然の美しさと恐ろしさを骨の髄まで知り尽くした彼ですが、実はこれまで「山でのデジタルギアの導入」には極めて慎重、いや、むしろ強い抵抗感を抱くアナログ実用主義者でした。「過酷な山岳地帯での長期にわたる行動管理をスマートウォッチに任せるのは、まだ時期尚早ではないか」――そんな先入観を抱えていた彼が、マイナス30℃、標高6,000メートルを超える極限の未踏峰遠征を前に、初めて最新のタフネスフラッグシップモデル「Amazfit T-Rex Ultra 2」を左腕に巻くことを決意しました。

食わず嫌いだったスマートウォッチが、厳しい未開の高山でいかにして”手放せない相棒”へと変わっていったのか。遠征から帰国したばかりの杉本さんに、そのリアルなインプレッションを熱く語ってもらいました。

■プロフィール

杉本 龍郎(すぎもと・たつろう)

プロ山岳ガイドであり、国内外の過酷なバリエーションルートや高所登山で実績を重ねる登山家。2026年、ネパールの未踏峰「ジャルキャヒマール(Jalkya Himal)」遠征に挑み、見事登頂後、そのままもう一つの未踏峰ギャラ(Gyala)と共に、未踏峰2座の初登頂を果たす。里山からヒマラヤ、バリエーションルートまで、ゲストを安全に導くプロフェッショナルとして多くの登山愛好家から絶大な信頼を集めている。

食わず嫌いだったスマートウォッチ。アナログ派の自分を躊躇させていた、いくつかのリアルな不安

山岳ガイドの道具選びは、そのままゲストや自身の命の選択に直結する。過酷な寒冷地や岩場において、簡単に壊れたり、バッテリーが切れてしまったりするような軟弱なデジタルギアは、単なる足手まといにしかならないからだ。かつてアナログの頑丈な登山時計を愛用していた杉本さんが、スマートウォッチの存在を知りながらも長年その一歩を踏み出せなかった背景には、極めてまっとうな安全へのこだわりと、ベテランならではの『食わず嫌い』があった。

「実は、3年前までは当時多くの登山者が使っていたのと同じアナログの登山時計を何代も愛用し続けていたんです。それ以前には、時計そのものを腕に着けない時期すらありました。『山では、どうしても必要になれば携帯(スマートフォン)で時間を見られるし、クライミングの時に時計をぶつけて擦れたり、傷ついたりするのも嫌だしな』と。

ですが、冬山やグローブを着用するような岩場では、いちいちポケットからスマートフォンを取り出す行為そのものが億劫ですし、スマホ自体のバッテリーを温存したいという目的もあって、あらためて時計の重要性を感じて山で使い始めたんです。

もちろん、周囲の登山者やガイド仲間のなかにもスマートウォッチを導入した人がいるのは知っていましたし、興味もありました。ただ私にとっては、乗り換えを決断するために越えなければならないハードルがまだいくつかありました。

一番はやはり、毎日のように必要となる『充電の手間』です。長期間のテント泊や重装縦走のなかで、これ以上充電器や予備バッテリーを持ち歩きたくなかった。次に『温度(寒さ)への不安』。冬山でスマートフォンのバッテリーが寒さのせいで突然ゼロになり、ただのアルミの板になってしまう光景を何度も見てきましたから、もし時計も寒さで同じように止まってしまったら駄目だろうと。

さらには『機能が多すぎて、自分に使いこなせるのか』という不安です。余計な機能に振り回されるのも嫌だし、使いこなせないまま腕に着けているのも気持ち悪い。そうした先入観から、ずっとアナログの世界に踏みとどまっていました」

マイナス30℃の凍りつくテント。多くの電子機器が沈黙する中で、平然と動き続けた「本物の信頼性」

遠征の出発直前、3月の頭に彼の左腕に収まった『T-Rex Ultra 2』。ペアリングの方法すら手探りだったスマートウォッチ初心者の彼が、いきなりネパールの未踏峰ジャルキャヒマールという過酷極まる舞台にこれを持ち込んだ。そして迎えた、標高6000m、気温マイナス30度の極寒。カチコチに凍りついたテントの中で、彼がスマートウォッチの耐寒性に抱いていた疑念は、完璧な『信頼』へと塗り替えられることになる。

「本当にギリギリのタイミング、出発の約1ヶ月前に時計を受け取りました。スマートウォッチを触ったことすらなかった自分は、最初はとにかく何もわからない状態で、カトマンズのホテルで海外の地図をどうダウンロードすればいいのかすら分からず、サポート担当者にメールで必死に確認しながら、屋外に出てようやくマナスルエリアの地形図をダウンロードできたような状態でした(笑)。

そしていざ遠征が始まり、標高6,000m、マイナス30℃に達する極寒のテントに入る日々が訪れました。空気ですら凍りつくのではないかと思うほどの寒さ。朝起きると、たいていのギアはバリバリに凍りついています。無線機なんかは冷え切ってしまって、朝一番には電源すら入らなくなってしまう。

ところが、そんな極限状態にあっても、『T-Rex Ultra 2』だけは何事もなかったかのように平然と、正確に動き続けていたんです。液晶が遅くなることもなく、完全に外気に晒したままにしておいても全く問題なく動作する。この圧倒的な強さを目撃した瞬間、寒さに対する不安は一瞬で吹き飛びましたね。

ハードウェアとしての頑丈さも無敵でした。氷河を渡り険しい岩場をよじ登る中で、時計を何度もガツガツと硬い岩や氷、登攀具にぶつけてしまいました。『あ、今のは絶対に傷がいったな』と思った時でも、グレード5チタン合金のベゼルとサファイアガラスのディスプレイには、本当に傷一つ付いていなかった。

しかも「グローブモード」を設定すると、分厚いグローブをしたままの手で画面のタップやスワイプまでできるという作りには、実際の使い手のことをここまで考えているのかと感心しました。

道具を甘やかさず、限界まで酷使できるタフさ。そしてリアルなフィールドで使えるかどうかまで行き届いた深い配慮。これこそ、我々登山家が求めていた本物のクオリティだと実感しました」

感覚から「数値」へ。高山の極限状況で実感した、自分のパフォーマンスに対しての新しい解像度

長年、自らの呼吸の乱れや鼓動の速さといった『主観的な感覚』だけで自分のペースを計ってきたベテラン登山家。しかし、手首のスマートウォッチが検知し続ける正確な心拍数や、高精度のGPSデータは、ベテランガイドの経験値に、これまでになかった客観的で冷静な『論理』を与えた。可視化されたデータが、彼の登山をより知的で安全なものへと変えていく。

「スマートウォッチとこれまでのアナログ時計の決定的な違いのひとつに『GPSの有無』がありますが、この精度の高さにも正直驚かされました。アナログ時計の高度計は気圧高度計ですから、天候による気圧変化でどうしても標高が数十メートル狂ってしまい、常に補正が必要でした。

でも、この『T-Rex Ultra 2』は、正確に標高を補正してくれる。現地ネパールの5,000m地点などに手書きされている看板の標高と比べても、GPSの数値がほぼドンピシャで一致するほどの正確さでした。手首を見るだけで、現在地、地形図、そして自分が歩いてきた正確な軌跡が寸分違わずわかる安心感は、何物にも代えがたいですね。

もう一つ興味深かったのが、『心拍数(脈拍)』の可視化です。日本でトレーニングしている時は、どれだけ負荷をかけても脈拍が170を超えることは滅多にありません。ところが、酸素が薄い6,000mの高所に入ると、自分では日本の冬山よりもはるかにペースを落とし、ゆっくりと静かに歩いているつもりなのに、あっという間に心拍数が175や180近くまで跳ね上がってしまう。

『高所では、体がこれだけ必死に血液を循環させようとして、負担を抱えているんだ』という現実が、目に見えるデータとして突きつけられる。これまでは息の上がり具合といった感覚だけで『まだいける』と判断していましたが、脈拍という客観的な物差しを持つことで、高所でも自分の体をより慎重に、安全にコントロールできるようになる。

自分が歩いた距離や、ルートの急勾配を示す高低差の断面図が画面に描かれるのも、現在進行形の冒険を違った形で俯瞰できる新鮮なワクワク感がありました。今までなんとなくの感覚でやってきたものが、すべて数値として可視化される気持ちよさは、登山の楽しみを何倍にも引き上げてくれますね」

プロの仕事道具としての進化。山の夜とゲストの安全を豊かにする、知られざる利便性

スマートウォッチの真価は、単なるアクティビティの記録だけにとどまらない。プロの山岳ガイドとして、ツアーを安全かつ計画通りに運行するための必需品としても、T-Rex Ultra 2は絶大な威力を発揮し始めている。さらに、何気ない日常の便利機能が、山での夜の快適性を驚くほど向上させた。

「プロのガイド業務においても、この可視化されたデータは大きな武器になっています。特に海外のゲストを案内する際、彼らはよく『あと何マイル、何キロだ?』と尋ねてきます。これまでは『だいたいこれくらい』と答えるしかありませんでしたが、これなら実際の高低差を踏まえたアクチュアルな距離を正確に伝えることができる。

それに、ゲストの安全管理とペースコントロールに直接使えるんです。たとえば、私自身の心拍数が140で歩いている時に、後ろのお客さんの心拍数が160まで上がっていたら、そのペースはお客さんにとって過酷すぎることが一目でわかる。『大丈夫です』と無理をしてしまうお客さんに対しても、数値という客観的な根拠を持って『今は焦る時間じゃないから、もう少し脈を落としてゆっくり歩きましょう』と、優しく、かつ説得力のあるアドバイスができるようになります。安全性を可視化できるのは、ガイドにとっても非常に心強いですね。

もう一つ、実際に山で使っていて『ライト機能』も意外と便利だなって最近気がついたんです(笑)。正直、使い始めるまでは『時計にライトなんて絶対に要らない、スマホやヘッドランプがあれば十分だ』と思っていました。

でも、ヘッドランプは人に向けられない、でも手元を照らしたいという時にこのライトが非常にちょうどよく、また夜中のテント内でトイレに行きたくなった時も、真っ暗な中手探りでヘッドランプを探す必要がなくなりましたし、このライトは本当にボーナス級の便利さです。

富士山の密集した山小屋での早朝、他のお客さんの迷惑にならずに強力なバイブレーションだけでスッと起こしてくれるアラームも、携帯のアラームより格段に起きやすくて重宝しています。

かつて一番の懸念だった充電。これも、実際に使ってみると完全に杞憂でした。遠征中ずっとトラッキングをしていましたが、最後のサミットプッシュの4泊5日ではローテーション中に1度しか充電を必要としませんでした。しかも充電時間もあっけないほど短く、4泊目の夜に残り20%くらいだった時に20分ほど充電しただけで90%以上になり『え、もう終わったの?』と驚かされたのを覚えています。家に帰ってギアのラックに数日間ぶら下げておくだけでは全然バッテリーが減らないし、Amazfit T-Rex Ultra 2 に関しては充電への億劫さは、試してみる前に感じていた不安はまったくの杞憂でした。

今後は、道に迷った時に来た道を戻れるナビゲーション機能『バックトラック』を覚えてバリエーションルートで使いたいですし、睡眠や食事のログもトータルで管理して、さらに深いセルフマネジメントに繋げていきたいと思っています」

デジタルを敬遠するすべての登山愛好家へ。一歩を踏み出すことで見える、山の新しい景色

かつての彼と同じように、デジタルの導入に二の足を踏んでいるベテランの愛好家やガイドは少なくない。慣れ親しんだアナログの良さは確かにある。しかし、それを取り替えるのではなく、ただ一歩だけデジタルの世界に足を踏み入れること。それによって広がるのは、より安全で、快適で、そして圧倒的にクリエイティブな山の景色だ。

「登山経験が豊富で、山のことをよく知っているベテランの方ほど、新しいデジタルギアを導入することに少し躊躇したり、アナログで十分だと思ったりする気持ちは本当によく分かります。私もそうでしたから。でも、最初からすべての機能を完璧に使いこなす必要なんて全くありません。

時間はもちろん、標高や心拍数、自分が歩いてきた軌跡。その中の何か一つでも、手首の上で『見える化』されるだけで、自分の肉体や自然に対する理解度がガラリと変わります。一つ機能を知るたびに、喜びや楽しみが増えて、次の山行ではこれを使ってみようといったワクワク感が生まれる。

道具に振り回されるのではなく、自分のペースで仲良くなっていけばいい。私にとってT-Rex Ultra 2は、過酷な自然環境に耐え抜くタフさを備えながら、私たちの山行をより安全で、より快適で、新しい楽しみに気づかせてくれる、頼もしい相棒です。デジタルが苦手な愛好家の皆さんにこそ、ぜひこの新しい景色を体験してみてほしいですね」